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当院で「舌下免疫療法」を受けていただくにあたって   2014年 09月 23日

スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダトレン」の10月8日の発売を控え、いよいよ当院でも治療の受付を10月1日より開始いたします。

舌下免疫療法とは(→クリックでリンク)  まずはこちらを参考にお読みください

花粉症に毎年悩まされる多くの方にとって、否が応でも期待が高まる「舌下免疫療法」ですが、この治療を始めて、充分な効果を得られるようになるには、以下のような条件を満たすことと、治療に対する相当な覚悟と根気が必要ですので、予めお知らせいたします。長いですが、とても大切なことなので、治療をご希望の方はどうぞ最後までお読みください。ひどい花粉症症状のある私が実際に患者の立場で考えたとしても、この条件や、また治療を継続する意思を保つことは、正直なところかなり高いハードルだと感じております。

<治療を受けていただくのに必要な条件>
・間違いなくスギ花粉が原因の花粉症であること:スギ花粉症であるかの確認のために血液検査をいたします。スギ花粉に反応が弱い方や他のアレルギー物質にも反応の強い方は、治療が受けられない場合があります。

・毎日忘れずに、スケジュール通り3年間以上服用する強い意志をお持ちであること:安定した効果が確実に得られるためには、3年以上の服用が推奨されており、花粉が飛んでいない時期も毎日欠かさず服用が必要です。ちなみに海外の論文では1年継続できた人は44%、3年継続できた人は15%と、80%以上の方は途中で中断してしまっているそうです。また、3年以上服用しても、効果がない場合もありますし、うまく効果が得られても、終了した後に効果が弱くなることもあります。

・必ず2週間おきに受診し、その都度必要な量の薬の処方を受けること:新薬は発売後1年間(平成27年10月まで)は、1回に2週間分の薬しか処方してはいけない規則になっているためです。平成27年10月以降でも1か月に1度の受診が必要です。

比較的高頻度に、軽度の副作用(口の中やのどがはれたりかゆくなる、耳のかゆみなど)が出ることがあること、ごくまれにアナフィラキシーショックという、重篤な副作用が起きる可能性があることもご了承いただけること:現在のところ日本での治験や、ヨーロッパで同治療を受けられている患者様で、死亡した症例はないと報告されています。初回の服用は当院で行い、万が一アナフィラキシーショックが起きた場合も、隣の内科の先生と連携し適切な対処を行います。特に治療開始後1か月までとスギ花粉飛散期は副作用が出現する頻度が高いため、その期間のご自宅での服用の際は、ご家族など見守ってくださる方のそばで行うのが望ましいとされています。

アナフィラキシーショックとは(シダトレンを製造している鳥居薬品ではなく、ファイザー製薬のサイトが一番分かりやすいですので、ご参照ください→クリックでリンク

<治療を受けていただけない方>
下記の方は、当院では舌下免疫療法は受けられません

・12歳未満の方、65歳以上の方:現在このように規定されております。将来規制が緩和される可能性もあります。
・スギ花粉症でも目の症状がない方:当院は眼科ですので、目の症状のない方は治療効果の正確な判定ができませんので、原則としてお断りしております。    
・気管支ぜんそく、うつ病、悪性腫瘍(がん)、自己免疫疾患のある方
・妊娠中の方、授乳中の方
・妊娠される可能性のある方(治療途中で妊娠した場合、治療は中断します)
・ステロイド剤を服用されている方、あるいは皮膚の広範囲に塗布されている方
・高血圧や狭心症、心不全に対するお薬(β遮断薬)を服用されている方
いずれも治療効果や安全性、副作用に関連しての規制です。薬に関して不明な方、不安な方は、お薬手帳など服用中の薬の名前がわかるものをご持参いただき、ご相談ください。

<治療の注意点>
・12月中旬から4月いっぱいまで、新規の治療は開始できません:スギ花粉飛散期にはスギ花粉アレルゲン=シダトレンに対する過敏性が高まっている場合が多いため、この期間は開始できないことになっています。
・服用前後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴は避けてください:血液循環が良くなることによって、副作用が強く出るのを防ぐためです。
・シダトレンは冷所保存が必要です:気温の高い時期にお出かけになる場合は、保冷バックに入れて携帯する必要があります。海外出張のある方は、セキュリティを通過するのにも工夫が必要になりそうです。(※追記:実際に鳥居薬品に問い合わせてみると、最初の1週間使うボトルは25℃(常温)で3か月、2週目のボトルと3週目以降使う使い切りパックは同温度で1週間は品質保持が可能とのことでした。そのため、そこまで厳密に「要冷蔵」を守らなくても、効果が落ちることはないと思われます。ただし、日中に車内に放置したり、直射日光のあたるところで25℃以上になってしまう場合はその限りではありません。)


以上、充分な治療効果を得るための条件、期間などのハードルがかなり高いことはご理解いただけたことと思います。耳鼻科や眼科の多くのクリニックで、この高いハードルが障害になって治療を開始することをためらっていると聞いています。治療方法を選択する際に、医師が適切なものを選択することは大切なことですが、受けていただける治療法が存在する以上、それを初めから制限してしまうのは私は好ましくないと考えています。条件が厳しくても患者様が望むものであれば、それをご提供できる体制を整えておくことが、クリニックの使命と考えます。私自身も花粉症であるがゆえに、患者様の辛さも理解しているつもりです。つらい花粉症が治る可能性があるのなら、これらの条件があろうともぜひこの治療法を受けてみたい、とお考えの方は、どうぞご来院ください。

<当院での舌下免疫療法の流れについて>
それでは当院で実際に舌下免疫療法を受けていただく際の具体的な受診の流れについてご説明いたします。10月1日(水)より診療を開始いたします。

①1回目受診:アレルギー症状がスギ花粉症であることを確認いたします。まずは普通にご来院いただき(ご予約は不要ですが、午前は11時30分、午後は6時までの受付です)、受付で舌下免疫療法をご希望される旨をお申し出ください。当日は問診と診察、アレルギー診断の血液検査をいたします。指先から少量の血液を採取し、30分ほどで結果が出ます。過去に同様の検査を受けたことのある方でも、確認のために必ず行います。スギ花粉症であることを確認できましたら、次回の受診の予約をお取りいたします。

②2回目受診:予約をお取りになった日時にご来院ください。実際の治療について詳しくご説明し、ご理解いただけたことを確認した上で、治療の同意書にご署名いただきます。治療薬「シダトレン」の処方箋をお渡しいたしますので、近隣の薬局でお受け取りになられたら、再度クリニックへお戻りください。診察室で実際に薬剤を滴下したあと、副作用が出ないか30分ほどクリニックの待合室で経過を観察いたします。特に目立った副作用が出なければご帰宅いただき、翌日からはご自宅でスケジュール通りに服用していただきます。

③3回目受診以降:シダトレンは当面の間、1回の処方で2週間分しかお出しできません。そのため、3回目受診以降は、2週間おきに受診していただき、予定通り服用できているか、副作用の出現がないかを確認した上で、次の2週間分のお薬を処方いたします。

以上が当院の診療の流れです。私もスタッフも、皆様にスムーズに診療を受けていただけるよう万全を期して臨むつもりですが、何分にも初めての治療ですので、初めのうちは手探りの部分もございます。不手際がないとも限りませんが、少なくともご受診いただく皆様にご迷惑をおかけしないように心がけます。なにとぞよろしくお願いいたします。

<追記>
私自身も服用を開始しました。治療を開始して1か月余りの体験記と、実際に治療を受けておられる患者様のご様子をまとめましたので、こちらもご参照ください → 「舌下免疫療法」体験記(クリックでリンク)


さらにその続報です
「舌下免疫療法」体験記2(クリックでリンク)
「舌下免疫療法」新規受付再開と体験記3(クリックでリンク)
「舌下免疫療法」その後と体験記4→(クリックでリンク)





by keye-clinic | 2014-09-23 21:25 | 花粉症と舌下免疫療法

iPS細胞移植の手術成功のニュース    2014年 09月 17日

これまでたびたび取り上げてまいりましたiPS細胞による目の治療の可能性が、また一つ進みました。 

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人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた臨床研究を進めている理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)などのチームは12日、目の難病のため視力が低下した兵庫県の70代女性に、iPS細胞から作った網膜の細胞を移植する世界初の手術を行った。女性の容体は安定しており、手術は成功したという。山中伸弥京都大教授が開発したiPS細胞が初めて人への移植に使われたことで、再生医療研究は新たな段階に入った。

 臨床研究の主な目的は安全性の検証。移植した細胞が根付くか、がんになる危険がないかなどを4年かけて確認する。視力回復の効果があるかも併せて調べる。
 研究代表の高橋政代理研プロジェクトリーダーは「手術が無事終わり安堵(あんど)している。広く使える治療にするため、どんどん進まなければいけない」と述べた。

 移植を受けたのは、網膜のうち光を感じる「神経網膜」へ栄養を送る「色素上皮」に異常な血管が生え、視力が低下する「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の患者。手術では右目の異常な血管と、血管が生えて傷んだ色素上皮を除去。患者本人の皮膚から作ったiPS細胞を色素上皮の細胞に変え、1辺が1.3ミリ、もう1辺が3ミリの長方形のシート状にしたものを代わりに移植した

 患者は症状が進み、視力も0.1に満たないため、期待できる治療効果は進行を止める程度。今後も数人の患者で安全性と効果を検証し、将来は大幅な視力回復につながる治療法にできる可能性があるという。(2014/09/12 時事ドットコムより抜粋)
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もちろん世界初。例のSTAP細胞論文ねつ造疑惑などで大揺れに揺れた理化学研究所(当時は高橋先生も体制への不信感を表明していました)でしたが、雑音に屈することなく、しっかりと研究を進めていく高橋先生とグループの先生方の強い信念に敬意を表します。

ただ、華々しい報道の中でも真実はしっかり押さえておかなければいけません。上の記事にもありますが、今回の手術の目的はあくまで「安全性の検証。移植した細胞が根付くか、がんになる危険がないかなどを4年かけて確認する」ことであって、「視力回復の効果があるかも併せて調べる」のは、いわば〝おまけ”なのです。もともと自分の体の一部でない細胞を移植した後、それが体の一部に同化(生着)すること自体が大変難しいことですし、ましてや正常の網膜と同じ機能を発揮できるようになることは、目の治療の研究者にとっては〝夢のまた夢”と言っていいくらいのことなのです。

手術を受けた患者様は「術後、周囲が明るく見えた」とコメントされているようですが、これはおそらく同時に行われたであろう白内障手術(通常、網膜の手術をする場合は目の内部がよく見えるように、白内障手術も同時に行います)の効果と思われ、iPS細胞移植による効果ではないことも付け加えておきます。

今回の報道で「加齢黄斑変性」はじめ難病で視力を失っている多くの患者様の期待が一気に高まっていること思いますが、高橋先生ご自身も言及されているように、「治療と呼べるようになるまでは10年はかかる」、つまりそれより短くなる期待は薄く、それ以上になるかもしれませんし、最終的に期待していた程の結果が得られないという場合も、残念ながら可能性としてありうる、のです。iPS細胞による目の治療の研究は、日本が最先端を行っていますので常に注目の的ですが、高まる期待を少し抑えて、冷静に見守っていきたいところです。

=追伸=
このニュースは当然全世界に発信され、これからは諸外国でも研究が盛んになっていくことでしょう。残念ながら日本では、こういった研究基盤が諸外国に比べて脆弱であることはたびたび指摘されています。特に環境、資金、人材など、すべてが強大なアメリカに対抗するのは大変なことです。今まで日本では「清貧」が良しとされるからか、研究には膨大な費用がかかることを声高にすることは〝卑しい”と誤解されることもあるようで、一般の方々にはあまり知らされていないように思います。実際、研究用の器具や試薬は、一般の製品と比べると需要が少ないがゆえに単価が高く、正確な結果を出すためにはほとんどが使い捨てられますので、一つの研究を成就させるまでには大量に消費することになります。研究者の人件費もないがしろにされがちです。

そこで、欧米諸国を差し置いて最先端を進んでゆくこのすばらしい研究が滞ることのないように、わたしも本当にささやかながら、iPS細胞研究の一助になるようにと寄付をさせていただきました。かつて網膜治療研究に携わっていた者として、ほんの微々たるものですがお役に立てれば、との気持ちからです。もし同じお気持ち、あるいはご興味がおありの方は、下記のサイトをご参照ください。今回の目の臨床研究に役立つばかりでなく、iPS細胞の研究に携わる多くの研究者の方々に、お力をお貸しいただけましたら幸いです。

http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/contribution/ips/index.html

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by keye-clinic | 2014-09-17 20:26 | 最新治療
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東戸塚駅西口すぐにある片桐眼科クリニックの院長ブログです。


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