「舌下免疫療法」体験記1   2014年 11月 18日

10月より当院で開始いたしましたスギ花粉症に対する新しい根治治療「舌下免疫療法(クリックで詳細へ)」ですが、これまで8名の方が希望され、治療を開始いたしました。

さて、私も重度の花粉症で、この療法が開始されたら自分も試してみるつもりだとかねてから予告しておりましたように、私もその8名に加わりました。開始して1か月経ちましたので、患者様の経過と、私自身の体験記をご報告いたします。

舌下免疫療法薬「シダトレン」の治療を受けるに当たって大きな問題となる点は2つ、「副作用」と「長期間継続すること」です。

「副作用」は同ブログ“当院で「舌下免疫療法」を受けていただくにあたって(→クリックでリンク)”でもお知らせしているように、命に関わる「アナフィラキシーショック」を起こす可能性が、ごくわずかながらにあるからです。また、軽い花粉症症状(くしゃみ、鼻水、目のかゆみ)や薬が接する口の中の粘膜の腫れ、かゆみは高い確率で起きることが知られています。

私の場合は、やはり副作用は出ました。始めてからしばらくの間は、口の中が何となく腫れているような、すっきりしない感じがありましたが、がまんできないことはなく、もちろん食べること、飲むこと、しゃべることに関してまったく影響はありませんでした。また、花粉症シーズンの走りによく出る症状なのですが、手がかさかさになったり、お腹が緩くなる症状も出ました。

この治療は、「スギ花粉に体を慣らす」のが目的ですから、むしろ軽い副作用が出ている方が「体が薬に反応している=効いてる?」という実感が持てて、むしろ継続するのに励みになります。

治療を開始された患者様では、口の中の違和感以外に、耳の中がかゆくなる、鼻がムズムズするなどの症状が出ている方もいましたが、思いのほか副作用が出ている方は少ない、という印象です。もちろん、アナフィラキシーショックやそれに準ずるような重篤な副作用が出ている方はいませんでした。

「シダトレン」のヨーロッパでの使用例、また国内での治験で、アナフィラキシーショックが起きる確率は「1億回に1回」といいますから、一般に広く使われている消炎鎮痛剤や抗生剤の内服で起こりうる激烈な副作用「スティーブンス・ジョンソン症候群」や「中毒性皮膚壊死症」などに比べても、ずっと少ないようです。
「スティーブンス・ジョンソン症候群」「中毒性皮膚壊死症」についてはこちら→クリックでリンク

ただ、来春の花粉が飛散する時期になると、体の薬に対する反応も変わってくるようで、この時期はより副作用が出やすくなるとのことですから、引き続き注意が必要です。


次に「長期間継続すること」に関してですが、これは最初の2週間が肝心のようです。

最初の1週間は、まず習慣付いていないので毎日忘れそうになるのを寝る前に思い出してあわてて内服することしばしば。専用のボトルに入った薬を1日目と2日目は1プッシュ、3日目と4日目は2プッシュ、5日目3プッシュ・・・と少しずつ増やしていくのですが、「今日は何回だったかなぁ…」と意外と忘れがちです。

そんな時に役立つのが薬を処方されるときにお渡ししている小冊子で、中はカレンダーになっており、日誌のように今日は何日目で何回プッシュで昨日までちゃんと飲んでいるかを自分で記入していくことができます。また、今はもっと便利なものがあり、スマートフォンで使える「舌下療法」専用のアプリがあり、日誌がつけられる以外に、決まった時間にセットしておくとアラームが鳴って飲み忘れないようにすることができたり、春には毎日の花粉飛散状況をお知らせしてくれます。

また、2週間目はさらに濃いお薬にボトルを変更し同じように使うのですが、私の場合そのタイミングで2泊3日の旅行が入ってしまい、苦労しました。まず、生活リズムが変わるのでつい忘れがちになります。また、この薬シダトレンは「要冷蔵」ですので、旅行中の持ち歩きでも常に「冷蔵」しておかなければいけません。そのため、日中は保冷剤を添えて持ち歩き、宿に着くとすぐに冷蔵庫に入れて、保冷剤も冷凍庫で再冷却(客室にない場合は宿の厨房の冷凍庫をお借りしなければいけません)してまた翌朝から使う、の繰り返しでした。2日目などは宿の冷蔵庫にあやうくシダトレンを忘れて帰りそうになり、チェックアウトしてからあわてて取りに戻る失敗もいたしました。

実際に鳥居薬品に問い合わせてみると、最初の1週間使うボトルは25℃(常温)で3か月、2週目のボトルと3週目以降使う使い切りパックは同温度で1週間は品質保持が可能とのことでした。そのため、そこまで厳密に「要冷蔵」を守らなくても、効果が落ちることはなさそうです。ただし、日中に車内に放置したり、直射日光のあたるところで25℃以上になってしまう場合はその限りではありません。

治療を開始された患者様で、今度カナダに出張に行く機会がある方がおられましたので、くれぐれもセキュリティでシダトレンを没収されないようにとお話しいたしました。昨今の厳しい機内持ち込み基準で大丈夫だったか、お帰りになったら是非お聞きしたいと思っております。

3週目に入ると、薬の形態が変わり、1日1パック使い切りタイプになります。そのころには常に同じ時間に服用する習慣もついています。服用前後2時間は、激しい運動、入浴、飲酒ができませんので、夜に服用するのはスケジュール的になかなか難しく、私はもっぱら起床時に服用しています。また、2週に1度薬の追加処方をしてもらうため、その時までに使い切るように消費することが、忘れずに服用する良い目標にもなっています。

患者様も何人か2回目、3回目の処方のために受診されていますが、みなさん毎日キッチリ服用しておられるようです。考えてみれば、自覚症状がない病気でも長期間薬を使い続けなければならない病気は、高血圧や糖尿病の内服や、緑内障の点眼などたくさんあります。ヨーロッパで3年後の脱落率が高かったからといって、日本でもそうとは限りません。「3年間継続するために強い意志を持って臨む必要がある」という私の考えは杞憂で、むしろ几帳面な方の多い日本人向きの治療法なのかもしれません。

以上、開始してから1か月半が経ちました「舌下免疫療法」のお薬「シダトレン」の使用感について、これまでの私の経験と患者様のご様子をまとめてみました。これから始めようとお考えの方の参考になりましたら幸いです。この「体験記」は、続報も随時掲載していく予定です。これからも引き続きお読みください。

・「舌下免疫療法」体験記2→(クリックでリンク)
・「舌下免疫療法」新規受付再開と体験記3→(クリックでリンク)


# by keye-clinic | 2014-11-18 19:24 | 花粉症と舌下免疫療法

当院で「舌下免疫療法」を受けていただくにあたって   2014年 09月 23日

スギ花粉症に対する舌下免疫療法薬「シダトレン」の10月8日の発売を控え、いよいよ当院でも治療の受付を10月1日より開始いたします。

舌下免疫療法とは(→クリックでリンク)  まずはこちらを参考にお読みください

花粉症に毎年悩まされる多くの方にとって、否が応でも期待が高まる「舌下免疫療法」ですが、この治療を始めて、充分な効果を得られるようになるには、以下のような条件を満たすことと、治療に対する相当な覚悟と根気が必要ですので、予めお知らせいたします。長いですが、とても大切なことなので、治療をご希望の方はどうぞ最後までお読みください。ひどい花粉症症状のある私が実際に患者の立場で考えたとしても、この条件や、また治療を継続する意思を保つことは、正直なところかなり高いハードルだと感じております。

<治療を受けていただくのに必要な条件>
・間違いなくスギ花粉が原因の花粉症であること:スギ花粉症であるかの確認のために血液検査をいたします。スギ花粉に反応が弱い方や他のアレルギー物質にも反応の強い方は、治療が受けられない場合があります。

・毎日忘れずに、スケジュール通り3年間以上服用する強い意志をお持ちであること:安定した効果が確実に得られるためには、3年以上の服用が推奨されており、花粉が飛んでいない時期も毎日欠かさず服用が必要です。ちなみに海外の論文では1年継続できた人は44%、3年継続できた人は15%と、80%以上の方は途中で中断してしまっているそうです。また、3年以上服用しても、効果がない場合もありますし、うまく効果が得られても、終了した後に効果が弱くなることもあります。

・必ず2週間おきに受診し、その都度必要な量の薬の処方を受けること:新薬は発売後1年間(平成27年10月まで)は、1回に2週間分の薬しか処方してはいけない規則になっているためです。平成27年10月以降でも1か月に1度の受診が必要です。

比較的高頻度に、軽度の副作用(口の中やのどがはれたりかゆくなる、耳のかゆみなど)が出ることがあること、ごくまれにアナフィラキシーショックという、重篤な副作用が起きる可能性があることもご了承いただけること:現在のところ日本での治験や、ヨーロッパで同治療を受けられている患者様で、死亡した症例はないと報告されています。初回の服用は当院で行い、万が一アナフィラキシーショックが起きた場合も、隣の内科の先生と連携し適切な対処を行います。特に治療開始後1か月までとスギ花粉飛散期は副作用が出現する頻度が高いため、その期間のご自宅での服用の際は、ご家族など見守ってくださる方のそばで行うのが望ましいとされています。

アナフィラキシーショックとは(シダトレンを製造している鳥居薬品ではなく、ファイザー製薬のサイトが一番分かりやすいですので、ご参照ください→クリックでリンク

<治療を受けていただけない方>
下記の方は、当院では舌下免疫療法は受けられません

・12歳未満の方、65歳以上の方:現在このように規定されております。将来規制が緩和される可能性もあります。
・スギ花粉症でも目の症状がない方:当院は眼科ですので、目の症状のない方は治療効果の正確な判定ができませんので、原則としてお断りしております。    
・気管支ぜんそく、うつ病、悪性腫瘍(がん)、自己免疫疾患のある方
・妊娠中の方、授乳中の方
・妊娠される可能性のある方(治療途中で妊娠した場合、治療は中断します)
・ステロイド剤を服用されている方、あるいは皮膚の広範囲に塗布されている方
・高血圧や狭心症、心不全に対するお薬(β遮断薬)を服用されている方
いずれも治療効果や安全性、副作用に関連しての規制です。薬に関して不明な方、不安な方は、お薬手帳など服用中の薬の名前がわかるものをご持参いただき、ご相談ください。

<治療の注意点>
・12月中旬から4月いっぱいまで、新規の治療は開始できません:スギ花粉飛散期にはスギ花粉アレルゲン=シダトレンに対する過敏性が高まっている場合が多いため、この期間は開始できないことになっています。
・服用前後2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴は避けてください:血液循環が良くなることによって、副作用が強く出るのを防ぐためです。
・シダトレンは冷所保存が必要です:気温の高い時期にお出かけになる場合は、保冷バックに入れて携帯する必要があります。海外出張のある方は、セキュリティを通過するのにも工夫が必要になりそうです。(※追記:実際に鳥居薬品に問い合わせてみると、最初の1週間使うボトルは25℃(常温)で3か月、2週目のボトルと3週目以降使う使い切りパックは同温度で1週間は品質保持が可能とのことでした。そのため、そこまで厳密に「要冷蔵」を守らなくても、効果が落ちることはないと思われます。ただし、日中に車内に放置したり、直射日光のあたるところで25℃以上になってしまう場合はその限りではありません。)


以上、充分な治療効果を得るための条件、期間などのハードルがかなり高いことはご理解いただけたことと思います。耳鼻科や眼科の多くのクリニックで、この高いハードルが障害になって治療を開始することをためらっていると聞いています。治療方法を選択する際に、医師が適切なものを選択することは大切なことですが、受けていただける治療法が存在する以上、それを初めから制限してしまうのは私は好ましくないと考えています。条件が厳しくても患者様が望むものであれば、それをご提供できる体制を整えておくことが、クリニックの使命と考えます。私自身も花粉症であるがゆえに、患者様の辛さも理解しているつもりです。つらい花粉症が治る可能性があるのなら、これらの条件があろうともぜひこの治療法を受けてみたい、とお考えの方は、どうぞご来院ください。

<当院での舌下免疫療法の流れについて>
それでは当院で実際に舌下免疫療法を受けていただく際の具体的な受診の流れについてご説明いたします。10月1日(水)より診療を開始いたします。

①1回目受診:アレルギー症状がスギ花粉症であることを確認いたします。まずは普通にご来院いただき(ご予約は不要ですが、午前は11時30分、午後は6時までの受付です)、受付で舌下免疫療法をご希望される旨をお申し出ください。当日は問診と診察、アレルギー診断の血液検査をいたします。指先から少量の血液を採取し、30分ほどで結果が出ます。過去に同様の検査を受けたことのある方でも、確認のために必ず行います。スギ花粉症であることを確認できましたら、次回の受診の予約をお取りいたします。

②2回目受診:予約をお取りになった日時にご来院ください。実際の治療について詳しくご説明し、ご理解いただけたことを確認した上で、治療の同意書にご署名いただきます。治療薬「シダトレン」の処方箋をお渡しいたしますので、近隣の薬局でお受け取りになられたら、再度クリニックへお戻りください。診察室で実際に薬剤を滴下したあと、副作用が出ないか30分ほどクリニックの待合室で経過を観察いたします。特に目立った副作用が出なければご帰宅いただき、翌日からはご自宅でスケジュール通りに服用していただきます。

③3回目受診以降:シダトレンは当面の間、1回の処方で2週間分しかお出しできません。そのため、3回目受診以降は、2週間おきに受診していただき、予定通り服用できているか、副作用の出現がないかを確認した上で、次の2週間分のお薬を処方いたします。

以上が当院の診療の流れです。私もスタッフも、皆様にスムーズに診療を受けていただけるよう万全を期して臨むつもりですが、何分にも初めての治療ですので、初めのうちは手探りの部分もございます。不手際がないとも限りませんが、少なくともご受診いただく皆様にご迷惑をおかけしないように心がけます。なにとぞよろしくお願いいたします。

<追記>
私自身も服用を開始しました。治療を開始して1か月余りの体験記と、実際に治療を受けておられる患者様のご様子をまとめましたので、こちらもご参照ください → 「舌下免疫療法」体験記(クリックでリンク)


さらにその続報です
「舌下免疫療法」体験記2(クリックでリンク)
「舌下免疫療法」新規受付再開と体験記3(クリックでリンク)
「舌下免疫療法」その後と体験記4→(クリックでリンク)





# by keye-clinic | 2014-09-23 21:25 | 花粉症と舌下免疫療法

iPS細胞移植の手術成功のニュース    2014年 09月 17日

これまでたびたび取り上げてまいりましたiPS細胞による目の治療の可能性が、また一つ進みました。 

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人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた臨床研究を進めている理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)などのチームは12日、目の難病のため視力が低下した兵庫県の70代女性に、iPS細胞から作った網膜の細胞を移植する世界初の手術を行った。女性の容体は安定しており、手術は成功したという。山中伸弥京都大教授が開発したiPS細胞が初めて人への移植に使われたことで、再生医療研究は新たな段階に入った。

 臨床研究の主な目的は安全性の検証。移植した細胞が根付くか、がんになる危険がないかなどを4年かけて確認する。視力回復の効果があるかも併せて調べる。
 研究代表の高橋政代理研プロジェクトリーダーは「手術が無事終わり安堵(あんど)している。広く使える治療にするため、どんどん進まなければいけない」と述べた。

 移植を受けたのは、網膜のうち光を感じる「神経網膜」へ栄養を送る「色素上皮」に異常な血管が生え、視力が低下する「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の患者。手術では右目の異常な血管と、血管が生えて傷んだ色素上皮を除去。患者本人の皮膚から作ったiPS細胞を色素上皮の細胞に変え、1辺が1.3ミリ、もう1辺が3ミリの長方形のシート状にしたものを代わりに移植した

 患者は症状が進み、視力も0.1に満たないため、期待できる治療効果は進行を止める程度。今後も数人の患者で安全性と効果を検証し、将来は大幅な視力回復につながる治療法にできる可能性があるという。(2014/09/12 時事ドットコムより抜粋)
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もちろん世界初。例のSTAP細胞論文ねつ造疑惑などで大揺れに揺れた理化学研究所(当時は高橋先生も体制への不信感を表明していました)でしたが、雑音に屈することなく、しっかりと研究を進めていく高橋先生とグループの先生方の強い信念に敬意を表します。

ただ、華々しい報道の中でも真実はしっかり押さえておかなければいけません。上の記事にもありますが、今回の手術の目的はあくまで「安全性の検証。移植した細胞が根付くか、がんになる危険がないかなどを4年かけて確認する」ことであって、「視力回復の効果があるかも併せて調べる」のは、いわば〝おまけ”なのです。もともと自分の体の一部でない細胞を移植した後、それが体の一部に同化(生着)すること自体が大変難しいことですし、ましてや正常の網膜と同じ機能を発揮できるようになることは、目の治療の研究者にとっては〝夢のまた夢”と言っていいくらいのことなのです。

手術を受けた患者様は「術後、周囲が明るく見えた」とコメントされているようですが、これはおそらく同時に行われたであろう白内障手術(通常、網膜の手術をする場合は目の内部がよく見えるように、白内障手術も同時に行います)の効果と思われ、iPS細胞移植による効果ではないことも付け加えておきます。

今回の報道で「加齢黄斑変性」はじめ難病で視力を失っている多くの患者様の期待が一気に高まっていること思いますが、高橋先生ご自身も言及されているように、「治療と呼べるようになるまでは10年はかかる」、つまりそれより短くなる期待は薄く、それ以上になるかもしれませんし、最終的に期待していた程の結果が得られないという場合も、残念ながら可能性としてありうる、のです。iPS細胞による目の治療の研究は、日本が最先端を行っていますので常に注目の的ですが、高まる期待を少し抑えて、冷静に見守っていきたいところです。

=追伸=
このニュースは当然全世界に発信され、これからは諸外国でも研究が盛んになっていくことでしょう。残念ながら日本では、こういった研究基盤が諸外国に比べて脆弱であることはたびたび指摘されています。特に環境、資金、人材など、すべてが強大なアメリカに対抗するのは大変なことです。今まで日本では「清貧」が良しとされるからか、研究には膨大な費用がかかることを声高にすることは〝卑しい”と誤解されることもあるようで、一般の方々にはあまり知らされていないように思います。実際、研究用の器具や試薬は、一般の製品と比べると需要が少ないがゆえに単価が高く、正確な結果を出すためにはほとんどが使い捨てられますので、一つの研究を成就させるまでには大量に消費することになります。研究者の人件費もないがしろにされがちです。

そこで、欧米諸国を差し置いて最先端を進んでゆくこのすばらしい研究が滞ることのないように、わたしも本当にささやかながら、iPS細胞研究の一助になるようにと寄付をさせていただきました。かつて網膜治療研究に携わっていた者として、ほんの微々たるものですがお役に立てれば、との気持ちからです。もし同じお気持ち、あるいはご興味がおありの方は、下記のサイトをご参照ください。今回の目の臨床研究に役立つばかりでなく、iPS細胞の研究に携わる多くの研究者の方々に、お力をお貸しいただけましたら幸いです。

http://www.kikin.kyoto-u.ac.jp/contribution/ips/index.html

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# by keye-clinic | 2014-09-17 20:26 | 最新治療

目の中の宇宙   2014年 07月 07日

今日は七夕。

昨年は早くも7月6日に梅雨明けしたそうですが、今年は例年通り梅雨の真っただ中。この時期に、果たして織姫と彦星はいったいいつ会えるんだろうと、子供の頃からずっと理不尽に感じておりました。

さて、「ミクロコスモス」という言葉をご存知でしょうか?訳すと「小宇宙」ですね。「驚異の小宇宙 人体」というNHKの番組がかつてありましたが、「小さなものでも、その中の仕組みがまるで宇宙のように複雑かつ壮大なもの」と私は解釈しています。

目の中の営みは、まさに「ミクロコスモス」。小さな小さな体の一部分なのに、外部からの情報の約70%を一手に引き受けていて、なおかつその情報処理の仕組みといったら複雑かつ壮大です。すべての臓器の中で唯一無二の透明性を保ち、光の強さ、色を鮮明にとらえ、それを微小な電気信号に変換し、いくつもの種類の細胞を介して脳に伝える精巧な受像機。それにはキャノンの最高級一眼レフも、ソニーの最新4Kテレビも遠く及びません。

その精巧さに比べると、私も研究にたずさわっていた「人工眼(人工網膜)」(クリックで記事へ)などは名ばかり?で、その機能の差にがっかりすることしばしでした。世界の優れた研究者が日夜研究を重ねて作り上げたものでも、実際の目の機能には足元にも及ばないものでした。

光、色、形のすべてを漏らすことなくとらえる小さな臓器、眼球。思い起こせば私が眼科医になったのも、その素晴らしさに魅了されたからでもありました。

さて、昔の少女漫画などでは大きな黒目の中にキラキラした星がいくつも描かれていたものですが、実際に目の中に星ができることがあるんです。

「星状硝子体症(せいじょうしょうしたいしょう)」
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目の内部空間のほとんどを占めるのが、卵の白身のような透明でドロッとした液体で、これを硝子体(しょうしたい)と呼びます。ものを見るときに光が通る部分ですから、当然透明でないといけません。そこに、小さな白い砂粒のようなものが、数個~無数に浮いている状態です。目の内部は真っ暗ですから、そこに光を当てると、光った粒があたかも暗黒の宇宙にきらめく満天の星空のように見えるのです。粒の成分はカルシウムで、病気ではなく自然発生的にできると考えられています。

残念ながら、みさなんがそれを目にすることはありませんし、それどころか、ご本人でさえも気づくことはほとんどありません。これを見ることができるのは、眼科の検査機器を使って目の内部を照らした時に限られますので、目の中の星空を眺められるのは眼科医の特権でもあります。以前ご紹介した「クリスマスツリー白内障」(クリックで記事へ)にも似ていますね。

天の川の見えない七夕には、目の中の星空に思いをはせて、短冊に願い事を書いてみるのもよいかもしれません。


# by keye-clinic | 2014-07-07 14:50 | 雑感

「ものもらい」は他の人からもらうもの?   2014年 06月 05日

当院のようなクリニックにおかかりの患者様で、よくみられる病気のひとつに「ものもらい」があります。

まぶたの縁にある毛穴に感染を起こしたり(麦粒腫:ばくりゅうしゅ)、炎症が起きて腫れて痛くなる(霰粒腫:さんりゅうしゅ)状態を総称して「ものもらい」と呼んでいます。(→当院ホームページ解説へ

この「ものもらい」、埼玉で生まれ東京で育った私は当たり前のように使っていましたが、実は地方によってまったく呼び名が違うことは、眼科医になってから知りました。

「ものもらい」は中部~関東以北で主に使われているようです。東戸塚界隈は関西の企業からの出向の方が多く、院内でも頻繁に関西弁が聞かれますが、圧倒的に「めばちこ」と呼んでいる方が多いです。

先日いらした北海道出身の女性の患者様には「めっぱ」というのだと教えていただきました。「子供のころはよく、めっぱろくじゅうし、なんて言ってたものよ」と笑っておられました。妻の実家の新潟でも、一部の方はそう呼ぶそうです。

地方色の極みが「おひめさん」または「お姫様」。これはほぼ熊本限定です。教えてくださった男性の患者様は、口にするのが少し恥ずかしそうでした。

色々調べているうちに、ロート製薬のホームページに「ものもらいMAP」なるものを見つけました。(→クリックでリンク)これによると、ほかにも色々な呼び名や由来があるようで、大変詳細に書かれていました。興味のある方はどうぞご覧になってみてください。それにしても、ここまで多種多様な呼び方がある病気は珍しいです。それだけ万人になじみのあるものだということでしょう。

ちなみに、このホームページによると、「ものもらい」の由来は「これを治すために人からものをもらう」というところから来ているようです。人から人へうつるから、と思っておられる方が多いようですが、細菌感染を起こしていても伝染性ではないのでご安心ください。登園、登校、プールも問題ありません。

私の印象では、ものもらいになった方のうち、半分くらいは自然に治ります。数日たって良くならない、あるいは目ヤニ、痛み、腫れを伴う場合は治療が必要ですので、眼科に受診しましょう。




# by keye-clinic | 2014-06-05 21:03 | 目の病気あれこれ
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東戸塚駅西口すぐにある片桐眼科クリニックの院長ブログです。


by keye-clinic
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