舌下免疫療法薬の発売延期   2014年 04月 08日

前回の「舌下免疫療法」のブログから約2か月、大変残念なお知らせです。

6月に発売予定だった舌下免疫療法に使用するお薬「シダトレン」の発売が延期になりました。

当院では発売に合わせて治療が開始できるように準備を進めていた矢先でしたので、本当にがっかりしました。

国民病と言ってもよいスギ花粉症治療に、有用性も安全性も高いと思われるこの薬が、来年の花粉症の時期を見据えた6月と言うタイミングに出せないのは、患者の皆様にとっても治療に当たる我々にとっても大変な痛手です。

以下、発売元の鳥居薬品のホームページからの抜粋です。

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鳥居薬品株式会社(本社:東京、社長:髙木正一郎、以下「鳥居薬品」)は、スギ花粉症を対象とした減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬「シダトレン®スギ花粉舌下液」(以下、「シダトレン®」)について、2014年1月17日、「スギ花粉症(減感作療法)」の効能・効果で製造販売承認を取得し、4月または5月の薬価収載に向けて対応してまいりましたが、今般、5月までの薬価収載を見送ることとしました。10月以降の発売に向けて努力を続けてまいります。なお、これに伴う当期(2014年3月期)の業績への影響はありません。
 鳥居薬品は、シダトレン®がスギ花粉症治療の新たな選択肢として貢献できることを期待しており、早期発売へ向けた努力を続けてまいります。
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製薬メーカーの、新薬発売までのプロセスの詳細は、医師の私にはわかりません。これまでの経緯をみると、鳥居薬品はこの薬を世に出すことに、大変前向きに、真摯に取り組んできたようには思いますが、残念ながらこれでは説明不足の感が否めません。

最近ではテレビなどにもさかんに取り上げられ世間の注目を集めていた矢先だったにもかかわらず、マスコミによる今回の発売延期の報道や、なぜそうなってしまったのか検証する報道がほとんどないことも腑に落ちません。

花粉症治療に当たる医師として、そして私自身花粉症患者として、これ以上滞ることなく発売されることを切に望みます。そして当院では引き続き、発売と同時に治療を始められるよう、準備を継続していく所存です。詳細につきましては、このブログや、当院のfacebook(リンクはここをクリック)、お知らせメール(当院ホームページからご登録ください)などで随時告知していく予定です。


# by keye-clinic | 2014-04-08 14:14 | 花粉症と舌下免疫療法

ついに出た! 花粉症の最新治療「舌下免疫療法」   2014年 02月 13日

先日、徳島で行われた「日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会」に出席してまいりました。

当初は飛行機で日帰りの予定でしたが、折しも関東~関西地方を襲った大雪で、軒並みフライトはキャンセル。前の晩から急きょ陸路で神戸入り、翌朝予定していた高速バスも橋が通行止めになり、電車に変更し岡山から乗り換えて瀬戸大橋を渡って徳島まで、2日合わせて10時間。夜も飛行機が飛ばないため予定外の現地泊となり、翌朝やっと動き出した高速バスで神戸入りして新幹線で戻ってきましたが帰りも7時間という大変な長旅でした。

なぜ眼科ではない学会にそこまでして出席したかというと、そこで行われた、花粉症に対する「舌下免疫療法」の講習会に参加するためでした。

「舌下免疫療法」は、アレルギー性鼻炎の治療として、ヨーロッパで広く行われていますが、アメリカでは承認が得られておらず、日本でも一部の先生が個人的にされている以外、一般的には行われていませんでした。

ここのところマスコミでも報道されておりますが、「シダトレン」というお薬が厚労省から認可され、今年の6月に発売される見込みで、この「シダトレン」が「舌下免疫療法」のお薬なのです。いよいよ本格的に日本でも行われるようになる予定で、しかも目の症状にも効果がある!とのことで、当院の患者様にもこの治療をご提供できたら、という一心から大雪にもめげず、参加してきたのでした。

「舌下免疫療法」は、「減感作療法」の方法のひとつで、花粉に対するアレルギーを獲得してしまった体にスギのエキスを少しずつ吸収させることで、体を花粉に慣れさせて、症状が出ないようにする、もしくは緩和する、というのが原理です。

減感作療法の良いところは、①今までの症状を抑えるだけの治療と違って、アレルギー自体が治る ②治るまで行かなかった人でも、症状が軽くなるので使う薬を減らせる ③一度効果が出ると、薬をやめても持続する ④使ったアレルゲン(例えば花粉症ならスギ)以外のアレルギー症状も改善する、などです。

かつて、漆(うるし)を扱う職人の方は、漆にかぶれない体質をつくるために若い頃には漆をなめていたそうです。これは経験によって行われていた言わば「天然減感作療法」です。

実際に「シダトレン」は特殊なお薬ではなく、花粉から抽出された「花粉エキス」です。毎日1回、舌下(ベロの下)に目薬のように落としてしばらくそのままにしておくと、口の粘膜から吸収されます。それを続けることで、スギ花粉に体が慣れるように体質が変化し、花粉症の症状が出にくくなるわけです。

今までは、「皮下免疫療法」といい、花粉エキスを少量注射をする方法で行われていました。しかし、注射の度に通院が必要なこと、毎回注射の痛みに耐えなければいけないこと、そして注射する量や体質によってアレルギー反応が激烈に起こる「アナフィラキシーショック」を起こすことがあるなどデメリットも多く、あまり普及しませんでした。

今回の「舌下免疫療法」は①毎日の滴下は自宅でできる(診察は2週間~1カ月おきに受診)②痛くない③今のところ、アナフィラキシーショックはほとんど起きない、という大きなメリットがあります。

たったそれだけで?あの辛かった花粉症が治る?まるで夢の治療ですが、もちろん良いことばかりではありません。
①長期間、毎日滴下しなければならない:効果が発現するまで数カ月、定着するまでは2~3年は続けなければいけません。これまで行われた治験では、脱落率(1年以上続けられず途中でやめてしまう率)が70%もあるそうです。症状がなくても地道に、毎日続けなければいけないのは、意外と辛いようです。
②花粉症の時期には始められない:症状がひどい時こそ治療をしたいのが花粉症の方の心情なのはとても理解できますが、残念ながらその時期に始めてもすぐに良くはなりません。むしろせっかくの効果を弱めてしまう恐れがありますので、花粉症の時期が終了してから始める必要があります。
③原則として、12歳以上が対象:近年は花粉症の低年齢化が進み、当院でも2歳で花粉症症状を発症しているお子さんが見受けられます。かゆいのを我慢できないお子さんにこそ使いたい治療ですが、今のところは年齢制限があります。
④効果が出ない方もいる:こんなに長く続けたのに…治療の効果がない方も3割くらいいるそうです。

我々ドクターも、今回の学会での講習会で修了証をもらい、さらに製薬会社のテストに合格して初めてこのお薬が処方できます。そのため、当院で処方するためには雪の中をかき分けてでも講習を受けに行きたかったのです。

6月というだけで、はっきりとした薬の発売日時が決まっていませんし、当院でもどのように患者様に受診していただくのか、受診スケジュールや予約方法など、これから検討する予定です。まだ何も決まっていない段階ですので、せっかくお問い合わせいただいても、スタッフも私も何もお答えできない状況です。大変恐れ入りますが、現段階での当院への直接のお問い合わせはご遠慮いただきますようお願いいたします。今後このブログや当院ホームページ(クリックでリンクします)で、決まり次第随時お知らせしていく予定ですので、どうぞお待ちください。また、リアルタイムで情報をお知りになりたい方は、ホームページから「クリニック情報お知らせメール」をお申し込みください。

以前からお知らせしておりますように、私も重症の花粉症ですので、開始と同時に自分もこの治療を始めてみるつもりです。そのレポートも逐一お伝えいたしますので、どうぞご期待下さい。

<追記1>
残念ながら、6月予定だった「シダトレン」の発売が延期になってしまいました。詳細は次回のブログ(ここをクリック)をご参照ください。

<追記2>
「舌下免疫療法」をさらに詳しくお知りになりたい方は、この治療の日本での第一人者、日本医科大学病院耳鼻科教授の大久保公裕先生の著書、「舌下免疫療法がわかる本」(日本経済新聞出版社 850円)がお勧めです。この療法のことが詳しく、そしてわかりやすく書かれています。

<追記3>
シダトレンは平成26年10月に無事発売され、当院でも治療を開始いたしました。その後の経過は下記ブログをお読みください。

当院で「舌下免疫療法」を受けていただくにあたって(→クリックでリンク)


# by keye-clinic | 2014-02-13 08:45 | 花粉症と舌下免疫療法

ブルーライトカット・メガネって効果あるの?   2014年 01月 27日

街の灯りが、とても綺麗ねヨコハマ、ブルーライト・ヨコハマ~♪

というわけで、ブルーライトといえばヨコハマ?ですから、横浜市にある当院のブログでこの話題に言及しないわけにはいきません。

現在、メガネ業界を席巻しておりますブルーライトカット・メガネですが、ブルーライトってそもそも何?果たして本当に効果はあるの?という疑問に、私なりにお答えします。

<「ブルーライト」とは>
文字通り、青い光です。光の波長が短い「紫外線」や長い波長の「赤外線」は目では見えませんが、目で見える波長の「可視光線」の中で、もっとも紫外線に近い青い色をしている光のことをあえて「ブルーライト」と呼んでいます。可視光線の中でも光のエネルギーが強いといわれています。

近年問題になっているのは、照明や、パソコン、スマホのディスプレイに、明るくて省エネのLEDが使われるようになってきたから。LEDからは従来のブラウン管や白熱灯、蛍光灯と比べ強いブルーライトが出ているそうです。

紫外線はお肌や目に有害というのは良く知られたことですが、それに近いブルーライトも目に悪いのでは?ということで取りざたされるようになったというわけです。

<ブルーライトが目に与える影響>
どんな影響が考えられるかというと、次の3つにまとめられます。

①まぶしい、ちらつく?:従来より明るいので、画面の調整が不十分だと起こりえます。疲れの原因になるかもしれません。

②目の内部の組織に影響あり?:強い紫外線では白内障を起こすことが知られています。同様に、目の奥まで到達しやすいエネルギーの強いブルーライトが内部の網膜に過度に当たると、黄斑変性症などの病気を引き起こす可能性が危惧されています。

③睡眠のリズムにも影響?:ブルーライトを浴びることで脳内分泌ホルモンのひとつ、メラトニンの生成が抑制されるそうです。メラトニンは眠りを誘う効果があり、それが抑制されることで寝つきが悪くなる可能性が指摘されています。(朝日を浴びることで寝覚めが良くなるのは、この逆の効果で、朝日に含まれるブルーライトが効果を高めていると言われています)

いずれもまだ研究段階のため、ブルーライトをカットすることがどこまで有効かの科学的な根拠には乏しい段階です。これらの影響の可能性を、ある有名私大の眼科教授が提唱して、提携したメガネ屋さんが大々的に宣伝したので世に知られるようになった、というのがこれまでの経緯です。

<ブルーライトカット・メガネは使うべきか?>
ブルーライトの問題は、従来から行われている紫外線対策と似ているように思います。紫外線は明らかにお肌や目に悪いことは知られていますので、気になる方は日焼け止めや日傘やサングラスを使いますが、それも1年中使う方もいれば、夏の日差しの強い時だけ使う方もいる。ではなぜそのように医学界が紫外線対策を個人任せにしているのでしょうか?もう少し科学的根拠をもとに説明すると、紫外線で受けたダメージ(例えば遺伝子が傷つくなど)を修復をする能力が人間の体には備わっていますので、ある程度の紫外線は許容範囲なわけです。ところがその「ある程度」が余りにも個人差がありすぎて、紫外線が体に悪いか?という問いには「一概には言えません」となるわけです。これは放射線でも同じことが言えますので、「どのくらい浴びたらがんになる」と断言できないのはそんな理由からです。したがってブルーライトも同様といえます。

実際に使っておられる患者様にうかがうと「使い始めて楽になった」とおっしゃる方もおられます。つまり、ブルーライトカット・メガネは万人に絶対必要なものではありませんが、気になる方は使うといいでしょうし、使ってみて効果を感じるなら使う意義があるというのが、私個人の見解です。

ちなみに私は毎日電子カルテ(パソコン)の前に座っておりますが、普段はブルーライトカット・メガネは使っておりません。それは単に、診察の際にのぞく顕微鏡に当たってわずらわしいから。今はディスプレイの「色温度調整」やブルーライトカット用のアプリもあるので、メガネを使わなくても対応可能な場合もあるのだそうです。

雑誌の調査では、他に先んじて大々的に売り出したメガネ屋さんのメガネは、他のメーカーのものよりブルーライトのカット率が悪い、などという報告もあります(モノダス2014 「パソコンメガネ3大メーカー徹底テスト」より)。これだけ世の中に普及してきたものですから、明確な規格を設けて製造することを、メーカーにはお願いしたいところです。

また、疲れ目の原因がメガネやコンタクトレンズの調整不足や、ドライアイによる症状の場合も多く見受けられますので、メガネを購入する前に眼科に受診して、確認する事もどうぞお忘れなく。

(このブログは、1月9日に私が出演したFMとつか「おはよう、咲くラジオ」の「目は口ほどにものをいい」でお話した内容に、若干補足したものです)



# by keye-clinic | 2014-01-27 21:12 | 最新治療

目の中にクリスマスツリー   2013年 12月 10日

街にはクリスマスソングが流れ、イルミネーションが彩る季節になりました。

日々診察をしていると、時々思わぬものを発見して、嬉しくなることがあります。

これもその一つ。

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「クリスマスツリー白内障」というロマンチックな病名です。

普通、白内障は文字通り白く、あるいは人によっては琥珀色に水晶体全体がにごってくるのですが、「クリスマスツリー白内障」は、にごりが部分的に結晶化して、診察をする顕微鏡の光のあたり具合によって、金、銀、赤、緑、黄色など、クリスマスツリーのオーナメントの様にキラキラ輝いて見えます。

ちなみに、白内障のご本人はそのようにキラキラするのは見えませんが、白内障特有のかすみ目も軽いことが多いです。

この白内障はめったに見られませんので、診察で見つけたときはちょっと幸せな気分になります。


(でも、病気を見つけて「幸せ」なんて、ちょっと不謹慎ですね)


# by keye-clinic | 2013-12-10 20:33 | 目の病気あれこれ

悲しいエピソード   2013年 11月 13日

今日、定期的においで下さる80歳の男性の患者様(Tさん)が、いつも通り受診されました。

「先生、涙が出ちゃってねぇ。涙が止まる薬、出してもらえませんか?」

私は、よくある老人性の流涙症(目頭にある涙の抜け道がつまって、行き場を失った涙が下まぶたにたまる現象)かと思い、
「では、診てみましょう」と、いつも通り診察を始めようとしたところ、

「昨日、妻が亡くなりましてね」


私は、とっさに二の句が継げませんでした。いつもお元気で、にこにことされている方でしたが、言われてみれば最近元気がないのを、見抜けなかった私がうかつでした。

奥様が亡くなられた翌日に受診にいらしたのは、闘病の末の覚悟ができておられたのでしょうか、寂しさを軽い冗談で紛らわせるためのお言葉だったのでしょうか、細かい事情はお聞きできませんでしたが、そのお気持ちを察すると切なく、思わず私も涙ぐんでしまいました。

一通り診察が終わり、

「心からお悔やみ申し上げます。そんなときは、どうぞ大いに涙をながしてください、Tさん」と言葉をかけることが私のできる精一杯でした。

悲しい時、つらい時に涙を流すとすっきりする事があります。科学的な根拠はありませんが、涙には嫌なこと、つらいこと、悲しいことを洗い流してくれる不思議な力が確かにあります。

私がかけた言葉が適切だったかは自信がありませんが、涙を流し、時間が流れることで、Tさんの悲しみが少しでも早く癒えていくことを願ってやみません。



# by keye-clinic | 2013-11-13 18:55 | 出来事
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東戸塚駅西口すぐにある片桐眼科クリニックの院長ブログです。


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