中秋の名月と目の関係   2013年 09月 20日

昨晩は中秋の名月。まんまるの月が綺麗に晴れ渡った夜空にぽっかりと浮かんでいました。月の満ち欠けと暦の関係で、中秋の名月が毎年まんまるになるとは限らないそうで、今度満月になるのは8年後、決まったばかりの東京オリンピック開催の次の年だそうです。

さて、本日の診察で「昨日の月がダブって見えた」というご相談を患者様よりいただきました。実はこれ、日々の診察でもよくご相談をうけることなのです。満月に限らず、三日月や半月でも「きれいに見えない」「もうひとつ重なって見える」などというご相談を多くうけます。

月は、ご存知の通り空の上、はるかかなたにあります。理論上は38万キロの距離ですが、身の回りにある物の距離に比べれば、ほぼ「無限遠」です。それほど遠い距離にあるものをはっきりくっきり見るためには、かなり高精度な目が必要になります。

例えば、皆さんが写真で見る月はカメラで撮影しています。日本製の精度の高いカメラのレンズの焦点を「無限遠」(マークでは∞ オートフォーカスでもそうなります)に合わせて写真を撮ることで、初めて月はぼやけずにはっきり写るのです。

人間の生体は工業製品ではありませんので、歪みはつきものです。どんなに目の良い人でも、多少の近視、遠視、乱視がある場合がほとんどで、その焦点ずれのファジー(この言葉、もはや死語でしょうか)な部分を実生活では脳で補正しています。ところが「黒い背景の上の光る物体」はその補正が効きにくい。そのため、月や星が裸眼でくっきり1つに見える人は実はごく少数なのです。

私も、右目がかなりの乱視なので、片目ずつで見ると右目では満月が二重に見えます。でも、「きれいだなぁ。虫の声も、秋の風情だなぁ」と、二重の満月も「日本人の心」をもってすれば補正可能で、美しく月を見ることができました。そこにお酒でも入ろうものなら、目が原因なのか酔っているのかも分からなくなるというものです。

8年後までは毎年若干欠けている中秋の名月、それも心で補正して、満月として楽しもうではありませんか。

補足:片目で見ると1つなのに、両目で見たら月が2つに見える場合だけは、目の動きが悪くなる病気の可能性があります。その場合は受診が必要です。


# by keye-clinic | 2013-09-20 19:23 | 目の病気あれこれ

iPS細胞移植の承認   2013年 07月 05日

先日、理化学研究所の高橋政代先生がプロジェクトリーダーの、iPS細胞を使用した「滲出性加齢黄斑変性」の臨床研究にゴーサインが出されました。

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厚生労働省の審査委員会は26日、理化学研究所などが申請していたiPS細胞を使う臨床研究計画を承認した。目の難病になった患者が対象で、2014年夏をメドにiPS細胞を使った初の治療が国内で始まる。京都大学の山中伸弥教授が人のiPS細胞を開発してから6年あまりで、同細胞を使う再生医療が実現に向けて大きく動き出した。

臨床研究は理研の高橋政代プロジェクトリーダーと先端医療振興財団(神戸市)などが計画し、今年2月に厚労省へ申請した。目の網膜の病気で失明の恐れもある「加齢黄斑変性」という難病が対象で、日本人に多い「滲出(しんしゅつ)型」の患者に実施する。物がゆがんで見えたり視野の中心部が暗く見えたりする。国内に70万人の患者がいるとされ、根本的な治療法はない。

同日開いた厚労省の審査委員会は国の指針に基づいて審査し、安全性や倫理面で問題はないと結論づけた。ただしiPS細胞ががんを起こさないことなどを確認するとの条件を付けた。7月中旬に厚生科学審議会(厚生労働相の諮問機関)の科学技術部会で審議に諮って厚労相に答申。理研などが臨床研究を実施する。実質的な審査は今回で終わった。iPS細胞の臨床研究が承認されたのは世界で初めて。

高橋プロジェクトリーダーは「正式な通知を受けていないので詳細は分かりませんが、慎重かつ迅速に審査していただいた。(委員会から出た)条件については詳細を確認した上で対応したい」とのコメントを発表した。

研究は同財団の先端医療センター病院(同市)と神戸市立医療センター中央市民病院が連携して手がけ、8月にも患者の治療に向けた準備を始める。患者の中から50歳以上で既存の薬が効かず、眼鏡などで矯正しても視力0.3未満などの条件を満たした6人を選ぶ。患者自身の皮膚などの細胞からiPS細胞を作った後、シート状の網膜細胞に育て患者の網膜の傷んだ部分と入れ替える。皮膚細胞からシートを作るには約10カ月かかるため患者の目に移植する治療は来夏になる見込み。治療を受けた患者は視力の大幅な回復は難しいものの、病気の進行は抑えられ、失明は避けられると期待される。

今回の臨床研究は安全性を最優先して進める。移植してから1年間は1~2カ月に1度の頻度で検査し、その後も3年間は経過を観察する。iPS細胞はがん細胞になる可能性が指摘されているが、目はがんになりにくいとされている。万が一、がんになってもすぐに診断できるうえ、治療も比較的容易であることなど患者の安全面を配慮した。

全国の病院で多くの患者が治療を受けられるようになるには、今回の臨床研究が成功するかどうかを慎重に見極める必要があるため、時間がかかる見通し。
(日本経済新聞 6月26日の記事より)

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普段、私は日経は読まないのですが、この記事に関しては非常に詳しく、しかも分かりやすく書けていて、私の説明も必要ないくらいでしたので引用させていただきました。少し補足すると、黄斑部に移植したiPS細胞が万が一がん化した時は、通常の眼底検査などで見つけられます。また治療はレーザーでがん細胞を焼き殺す方法をとります。これは外来で可能なため、患者さんの負担になる入院や手術が不要であることも、慎重な厚労省から早々に承認が下りた要因の1つでしょう。

「時間がかかる」はどのくらいなのか、この治療の確立を心待ちにしている方は誰しもが気になることと思います。私のあくまで独断的な予想ですが、期待している最も良い結果を得られれば7年~10年、通常なら20年くらいではないかと思います。

今回はあくまで「滲出性加齢黄斑変性」限定の臨床研究ですが、「網膜色素変性症」など、現在有効な治療方法のない病気におかかりで、この研究の成果を心待ちにしている患者さんもたくさんおられます。外来でも今回の報道について何度もお問い合わせを受けました。そうした多くの患者さんの期待が、1日でも早く実現する事を願いつつ、最新の情報を漏らさずお伝えすること使命を果たすべく、アンテナを張り巡らせる毎日です。


# by keye-clinic | 2013-07-05 20:43 | 最新治療

FMの生放送に出演しました   2013年 06月 21日

昨日、戸塚のミニFM局「エフエム戸塚 83.7MHz」の朝の番組「おはよう、咲くラジオ」に出演いたしました。出演時間は10分ほど、夏の目の健康対策についてお話ししました。

「エフエム戸塚 83.7MHz」(クリックでホームページへ)は、スタジオが当院と同じビルの2階にあります。以前もクリニック紹介のような形で出演したことはあったのですが、本格的に話すのは今回が初めてです。

生放送、さすがに緊張しました。収録ですと後で訂正が効きますが、生放送はしゃべった言葉がそのまま電波に乗ってしまいますので、迂闊なことは言えません。また、目の前のデジタル時計が刻一刻と進んでいくのが、タイマーのカウントダウンのように思え、「8時47分頃までお願いします」というパーソナリティのイッキーさんの言葉を思い出しながら、素人ながら何とかまとめようとしましたが、喉もからから、声もかすれ気味でした。

幸いイッキーさんのすばらしい進行のおかげで無事終了。同時進行で、コンフェデカップの日本対イタリアの試合が異様に盛り上がっていましたので、聴いてくださった方はほんの少数でしょうが(当院のスタッフでさえも聴いてくれた人は1人だけ…)、初出演にしては満足です。

それにしても、ミニFMのパーソナリティさんの仕事ぶりには驚きました。パーソナリティの方は喋るだけで、あとはスタッフの方がするのかと思ったらさにあらず、全部お1人でされていました。喋って、読んで、音楽かけて、ボリューム調節して…イッキーさんはパソコン2台の画面を駆使してニュースや天気予報、交通情報を読むために、片手にはマウス、そして反対の手にはご自分のi-phoneを持って刻々とリスナーから送られてくるツイッターを拾って紹介、その他にも手書きの原稿や資料を用意し、その都度それを読んで、ミキサーのボリュームを調節し…まるで手が5~6本もあるんじゃないかと思うほど。さすが、プロですね。某〇-waveの別所さんとか〇okyo-FMの中西さんにはできないだろうなぁ。

はるか昔の私が中学生だった頃、小さなラジカセで安いカセットテープに好きな歌手の歌を録音しまくっておりました。今では死語ですが「エアチェック」フリークだった私にとって、格調の高い「FM」番組は憧れの的でした。当時はNHK-FMとFM東京(現在のTokyo-FM)の2局しかなくて、かかる曲も「クラシック、ジャズ、クラシック、ときどきポップスと歌謡曲」といった感じでした。

「サウンドオブポップス」「ダイヤトーン・ポップスベストテン」「昼の歌謡曲」「夜のスクリーンミュージック」などなど、お世話になった番組は数知れず。その中でも最も好きだったのが、NHK-FMで夜の11:00から始まる「クロス・オーバー・イレブン」でした。スタイリッシュな音楽の合間に、落ち着いた男性のナレーション(富山敬さんや津嘉山正種さんだったと思います)のショートストーリーという構成で、最高にカッコイイ番組を、ワクワクしながら、でも親にばれないよう布団の中でイヤホンで聴いていたものでした。

その後、J-waveやFM-NACK5(私、埼玉出身なので)FM横浜などの黎明期からミニFM局がたくさんできた現在まで、ずっとFMを聴き続けてきた片桐少年が、中年になって自らFM番組に出演するなんて…うーん、感無量の1日でした!

<お話した内容>
・夏の紫外線予防のサングラスは、薄い色がお勧め。濃いと暗くなり、瞳孔が開いて逆に紫外線が目の中に入りやすくなるから。子供は新陳代謝が活発なので、サングラスはしなくてもOK。

・気温が高い夏は感染の季節。結膜炎やものもらいの予防は、バイ菌に対する抵抗力を落とさないように、良く寝て、体調を整えること。「ものもらい」は「ものをもらうと治る」という言い伝えが語源で、本来はうつるものではありません。

・エアコンはドライアイを起こしやすい。3コン(エアコン、パソコン、コンタクトレンズ)は3大原因。まず眼科を受診し、状況を確認して適切な目薬を選んでもらいましょう。


# by keye-clinic | 2013-06-21 19:26 | 出来事

人工眼の構造と機能   2013年 05月 30日

予告しておいてしばらく放置してしまい申し訳ありません。前回の人工眼の記事はご関心をもたれた方が多く、一時期は当ブログでもランキング1位を保っていました。遅ればせながらですがお約束通り、人工眼の構造と、現在の機種でどれだけの機能が期待できるかをお伝えいたします。

以前の記事で“「ごつい」システム”と申しましたが、報道された写真ではイメージが掴みづらかったのではないかと思いますので、当ブログ初の「画像」をアップして、ご説明いたします。(ずいぶん前に取り込んだ画像ですので、出典記事が見つからなくなってしまいました。記載せずの転載で申し訳ありません)

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最初の写真は外部システムです。見た目通りのサングラスに、目の代わりになるカメラがついており、バッテリーは肩から掛けています。「Antenna」は文字通りアンテナで、カメラがとらえた映像情報を、ワイヤレスで目に装着した本体へ送る働きと、本体が動くための電源を供給する働きをします。

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さて、2枚目は実際に目に装着されるシステムの写真です。目にどのように装着されるか分かりにくいですが、リングがそのまま目の玉に鉢巻きをしたようにぐるっとまきついているイメージです。さらに、内側に伸びる「一反もめん」のようなものは、目の壁を貫き中に入って、頭の部分が目の内部の壁にぴったり貼りつく感じです。実際にはこの頭の部分は「網膜」の下に設置しますので、リングが目の外に貼りついていて(黒い部分はアンテナへの送受信部分)、「一反もめん」はそこから繋がって1枚薄い膜を残して目の壁の内側にすべりこませるような形になります。

「こんなものが目についていて痛くないの?」→痛くはないかもしれませんが異物感は相当なものでしょう。
「目に穴開けたままにして大丈夫なの?」→あまり大丈夫ではありません。それゆえに、前回私が指摘したように、かなり重篤な副作用が高い確率で出てしまうのです。

「一反もめん」の頭には小さな電極が6×10個の長方形に並んでいて、各電極が網膜を刺激します。ではこのシステムでどれだけ見えるようになるかというと、理論的には長方形の中で60個並べた電球のオンオフで作れる形すべて、と言いたいところですが、実際にはそうはいきません。電極と網膜の神経との連絡、網膜から脳につながる経路など、複雑な要素が絡み合って、「やってみないとわからない」というのが実情です。そのため、同じ光を見せても、ある人には動かない1点の光に見え、またある人は流れ星のように見え、また他の人は三角や四角などの形に見え、ということが起こります。ただ、「失った光を取り戻した」という喜びは、みなさん共通のようです。

つたない説明で分かりにくかったかもしれませんが、現時点で「かなり無理がある」ことは何となく実感していただけましたでしょうか?しかし、医療の歴史を紐解けば、その進歩も「無理があるけど意味がある」ことからの積み重ねで日々発展してきたことがわかります。薬もしかり、検査もしかり、そして手術もしかりです。我々の世代では享受できなかったことも、私たちの子供の時代には実現しているかもしれません。

アメリカで最先端医療に携わっていた経験を生かし、今後もこれからの医療の発展のために、微力ながら寄与していきたいと思う今日この頃です。


# by keye-clinic | 2013-05-30 14:29 | 最新治療

今年の花粉症はなぜ猛威をふるったのか?   2013年 04月 24日

人工眼の解説の続きを書こうと思っていたら、猛威をふるった花粉症により開院以来例を見ないほどの患者様が来院され、忙しさにかまけてここまで伸びてしまいました。予定していた解説は次回にして、今年はなぜこれほど花粉症がひどくなったのかについて、検証してみます。

花粉症はスギ花粉に対するアレルギー症状です。当然花粉が多ければ症状は強くなります。

「環境省は19日、今年のスギとヒノキの花粉の飛散量は「例年や昨年に比べて非常に多かった」と発表した。本州、四国のほとんどで非常に多い状態がまだ続いているが、5月上旬までには終息するという。
 昨年の夏の気温が高く、花粉を放出する雄花が増えたことが主な原因。雨の日が少なく、花粉が雨に流されなかったことなどから、飛散量は環境省の当初予測も上回った。特にヒノキの花粉が多かった。
 11日までの集計で、スギとヒノキの花粉の飛散量は和歌山市と高松市で過去10年の平均と比べて4倍超になった。ほかに17県の観測点で2倍以上だった。飛散が少なかった昨年と比べると、水戸市、さいたま市、名古屋市、高松市では6倍を超えた。(4月19日、共同通信)」

実は一昨年も今年と同様、前年の夏が暑く、花粉が大量に飛びました。3月11日の震災のあった翌日の土曜日でさえも、多くの患者様がご来院されたので良く覚えています。ですが今年は、特に目の症状が激烈な方が多く、中でもお子様の症状が本当に悪くなっているのが印象的でした。今年受診されて花粉症と診断されたお子様で、最年少は2歳!これは今までになかったことです。

そこで、その真犯人とウワサされるのが、今年何かと物議をかもした、“アレ”です。

「中国で発生したとみられる微小粒子状物質「PM2・5」が日本国内で観測されている問題で、花粉症を引き起こすスギ花粉の飛散との“二重攻撃”に悩む人が増えている。20日には西日本から東日本にかけて黄砂の飛来も確認されている。PM2・5は花粉と結びつくことで健康被害が悪化する可能性が指摘されるが、黄砂による被害の悪化は確認されていない。専門家は「過度に恐れることはない」と冷静な対応を呼び掛けている。(3月21日、産経ニュースより抜粋)」

しかし、実際にはまだその関連性の科学的根拠は乏しく、真犯人と決めつけるのは早そうです。

喘息(ぜんそく)などのアレルギー疾患が、ディーゼル粉じんのような微粒子とアレルギー源になる物質を同時に与えることで悪くなることは動物実験で証明されていて、日光市の疫学調査では「交通量の多いところほどスギ花粉症の被害が大きい」と結論付けられているそうですが、なぜそうなるのかは科学的に証明されていません。

医師は科学者ですから、証明されていないけれど「どうもその傾向がある」ことを堂々と主張する事はできません。でも私は、経験からくる「カン」も、診断や治療には大切だと思っています。

科学的には検証できませんでしたが、「今年の花粉症は、何か違った」これは自らの花粉症経験を踏まえて、感じたことです。花粉だけではない何かが、作用していたのは間違いない・・・これが今年の花粉症を経験した私の「勘」もしくは「感」でした。

今年発症してしまった方々、特にお子様たちは、来年は早目に対処して、私と一緒にまたつらい時期を乗り切ってくれれば良いなと思います。

次回は人工眼の仕組みを解説いたします。


# by keye-clinic | 2013-04-24 20:27
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東戸塚駅西口すぐにある片桐眼科クリニックの院長ブログです。


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